死後離婚、「姻族関係終了届」の提出で

日経新聞から

2026年5月27日(水)朝刊から

○記事からの引用

 見出し:「義父母介護イヤ」 「『死後離婚』再び増」 「後期高齢者2000万人で『第2の波』」 「団塊ジュニア、問題に直面」

  • 配偶者の死後、義父母や兄弟姉妹らとの親族関係を終わらせる「姻族関係終了届」の届け出件数が増えている。
  • 「死後離婚」とも呼ばれ、義父母の介護や扶養から解放されたい思いが動機とされる。
  • 「このままでは夫の両親の介護を丸投げされる」。生存配偶者である妻は、姻族関係終了届を提出した。
  • 終了届は、義父母らの同意や通知も必要なく、役所へ提出するだけで済む。
  • 死後離婚に詳しい中里弁護士によると、義父母の扶養義務は原則なく、提出しても夫の遺族年金は受給でき、「精神的なけじめをつけるため」とみる。また、「実際に介護に直面する家族が増えたことが影響してるのではないか」と指摘。
  • 終了届を提出しても子ども(孫)と義父母(祖父母)の血族関係は続くので代襲相続する。関係悪化による争続もあり得るので、届け出る前に慎重な検討が必要。

○所長の感想など

 離婚では当然に終了する姻族関係ですが、配偶者が死亡した場合は当然には終了しません。 もし当然に終了するとしたなら、例えば、義父母と同居する妻も夫の死亡によって自動的に親族でなくなり、「縁が切れたから出ていけ」なんてことが昔ならあったでしょうから、残された妻の立場を保証する観点からは悪いことでもなかったと思います。
 ですから、姻族関係の終了の意思表示は、生存配偶者のみができ、義父母らがすることはできません。
 紙面の「けじめ」は言い得て妙です。
 今の時代、義父母との同居は少なく、介護保険などの社会保障も整ってきたので、終了届の必要性や効果を感じ難いかと思います。しかし、結果としての「丸投げ」に負い目や罪悪感などの感情を持たないばかりか、押し付けてくる直系血族がたくさんいる現実の中で、終了届で自分の身を守ることが必要な時代になったのかもしれません。

  • 民法が定める「扶養義務」は、次のようになっています。
  • 夫婦[民法752条]の間や親[民法817条の12 1項]の子に対する扶養義務
  • 直系血族と兄弟姉妹[民法877条1項]の相互の扶養義務
  • 直系血族と同居の親族[民法730条]の相互のたすけ合う義務 ⇒ 同居の場合は生存配偶者も負うことに
  • 特別な事情があるときの3親等内親族[民法877条2項]の相互の扶養義務 ⇒ 生存配偶者が審判で負う可能性がる
  • 730条の義務は、法律上の強制力のある扶養義務を生じさせるものではありませんが、「道徳感」や「倫理感」をもとにした「たすけ合う義務」だからこそ厄介です。「長男の嫁だから」がまかり通っているような親族関係ではなおさらです。また、義父母らが生活保護といった公的扶助を申請すると、親族として扶助の要請を行政から受けることもあり得ます。
  • 終了届の提出に提出期限はありません。親族の関係に応じて、相続終了後など、予防的に終了届を提出することで安全安心を確保することができます。また、争いになりそうなときにはすぐに提出すると決めておくのも、大人の対応としてありでしょう。
  • 最後に、終了届は役所へ提出するだけで済むのですが、祭祀財産を承継している場合にはこれを返還し、別途承継者を協議により決定しなければならない[民法769条1項]ことになっているので、留意が必要です。